前立腺がんの検査・診断
前立腺がんの症状
前立腺がんの症状はその進行の程度によってさまざまです。市区町村が実施する住民検診や人間ドックの前立腺がん検診(PSA検査)をきっかけに前立腺がんが見つかった方の多くは早期発見例で、一般に前立腺がんに特有の症状はありません。しかし、前立腺がんが進行すると、尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、残尿感、血尿など、排尿に関する症状が現れてきます。また、前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすいがんであることが知られており、例えば骨転移がある場合には、腰や背中に痛みが生じることがあります。
検査・診断
前立腺がんと診断されるまでには、前立腺がんを見つけるためのスクリーニング検査、前立腺がんであることを確認するための確定診断、前立腺がんの進行の程度を調べるための病期診断の3段階のステップがあります(図)。
① スクリーニング検査
代表的なスクリーニング検査はPSA検査(血液検査)で、前立腺がん検診で広く行われています。PSA(前立腺特異抗原)は前立腺で作られるたんぱく質で、通常は血液中には存在しませんが、がんや炎症がある場合に血液中に漏れ出てきます。PSAの値が高いほど前立腺がんの可能性は高くなりますが、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、PSA値が高いからといって必ずしも前立腺がんであるとは限りません。また、PSA値は年齢とともに上昇するため、年齢ごとに基準値が決められています(表1)。
通常は4.0 ng/mL以上か、または上記の年齢別の基準値を上回る場合に異常値と判断され、再度PSA検査を行ったり精密検査が行われます。
その他のスクリーニング検査として、直腸診(肛門から指を入れて前立腺の状態を触って確認する方法)や経直腸エコー(経直腸的超音波検査)などがあります。
② 確定診断のための検査
スクリーニング検査で前立腺がんが疑われたら、次に行われるのが前立腺生検です。前立腺生検とは、前立腺から組織(細胞)を採って、前立腺がんがあるかどうかを顕微鏡で確認する検査です。肛門から超音波プローブを入れ、モニター上の画像で前立腺を確認しながら、通常は前立腺がんが発生しやすい辺縁領域を中心に複数の箇所から組織を採ります。生検の方法には、直腸から器具(生検針)を刺して組織を採る方法(経直腸的)と、肛門と陰嚢の間から生検針を刺して採る方法(経会陰的)の2種類があります。針を刺すため、抗凝固薬などを服用している方は、検査の前に主治医との相談が必要です。
③ 病期診断のための検査
前立腺生検でがんが見つかったら、次にがんのある正確な位置や大きさ、広がりの程度、ほかの臓器に転移はあるのかなど、がんの病期(進行の程度)を診断する検査をします。病期診断には画像検査が必要で、MRI、CT、骨シンチグラフィなどが用いられます(表2)。これらの画像検査や直腸診の所見から病期診断が行われ、その後の治療方針を決めるうえでの参考となります。